夫婦で教育方針が合わない場合の考え方
執筆者:熊野貴文(幼児教室ひまわり塾長)
最終更新日 2022年10月02日
「夫婦の教育方針が合わない」ということで、悩まれる親御さんもたくさんいらっしゃいます。
幼児教室ひまわり塾長として1万人以上の保護者の方を指導してきた私の経験から、夫婦で教育方針が合わない場合の考え方をご紹介いたします。
幼児教室ひまわりの指導を受けておられる方は、大半が教育熱心な方です。
それはあたり前のことで、
・子供を医者にしたい
・トップレベルの学歴をつけさせたい
・頭の良い子に育ててあげたい
こんな大きな目的をお持ちの方が参加されているからです。
しかし、教育熱心なのが「夫婦そろって熱心」かというと、意外とそうではありません。
1.夫婦そろって教育熱心な方
2.お母さまだけが教育熱心な方
3.お父さまだけが教育熱心な方
このように分かれていますが、1が約60%、2が約35%、3が約5%・・・おおよそこんな比率なんです。
1の状況なら、夫婦で力を合わせて一緒にがんばることができます。
しかし、2や3の状況の場合は、「教育方針が夫婦で合わない」「一人だけが戦っている状況」ということになってしまいます。
また、一人だけで戦えるというのは、まだ良い方です。
一人が教育熱心、もう一人が無関心・・・これならある意味思ったように教育していけます。
一番厳しい状況なのは、「子供の教育に対して相手が妨害してくる」というパターンですね。
たとえば、
・お母さんは中学受験をさせたいのに夫が勉強させるなと言ってくる
・お父さんは子供に勉強させたいのに奥さまがそれを止めてくる
こんな状況ですね。
つまり、
・片方が勉強を重視している教育方針
・片方が勉強をさせたくない教育方針
こういう対立が起こっているのです。
私たちのもとには、この悩みに関して週に2回ほど相談が寄せられます。
たとえば、こんなご相談ですね。
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■ Mさんからのご相談
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娘には賢くなって欲しいので中学受験をさせたいと思っています。
医者にならなかったとしても、社会でしっかりと通用する力を持った大人に育ててあげたいです。
でも、私の主人は同じように考えてはくれません。
主人は田舎の公立高校出身で国立大学に進学した人です。
そんな主人の頭のなかでは
「おれは、中学受験なんかしなくても、国立大学に合格した。小さなうちは遊んでいた方が応用力がついて良いんだ。だから中学受験なんかしなくても遊ばせてあげたらいい!」
こんな持論があるようです。
もちろん主人が言うこともたしかに一理あると思います。
でも、中学受験を経験した子の方が大学受験に有利なのは明らかですし、主人にも私の教育方針を理解してもらえないかと願っています。
夫婦の教育方針が合わないこんな状況のなかで、私はどう考えれば良いのでしょうか?
・・・
こういう状況は、とてもつらいです。
周囲に協力者がいないわけですから孤独になりますし、子供に満足がいく教育をできないので焦ってしまいます。
そこで、Mさんのような状況に対して、
・どのように考えれば良いのか?
・実際に何をしていけば良いのか?
という部分を、今回の記事でお伝えしましょう。
なお、今回の記事のなかでは、
・お母さまが勉強を重視している教育方針
・お父さまが勉強をさせたくない教育方針
という状況を想定して、話を進めます。
逆の場合もあるのですが・・・冒頭でお伝えしましたように、この状況の方が圧倒的に多いです。
ですから、逆の状況(お父さまが教育熱心)の方は、立場を逆に考えて今回の記事を参考にしてください。
それでは、始めていきましょう。
【参考情報】夫の働き方と役割分担意識を考慮した実証分析
教育の責任者は誰か?
上でお話したMさんのように、「勉強なんてさせなくて良いじゃないか」とご主人から妨害されている場合、最初に決意して頂きたいことがあります。
それは、「教育の責任者はお母さま(自分)である」ということです。
なぜなら、お子さんと一番長い時間接しているのはお母さまだからです。
また、長い時間お子さんを見ているので、当然のことながら、子供の教育について考える時間も長くなってきます。
つまり、ご主人と比較して、
・お子さんのことをよく知っている
・教育に関して勉強している
ということになりますね。
冷静に考えれば分かることなのですが、改めて気が付くことが重要なんです。
ご主人から、
「そんなに勉強をさせる必要はない」「勉強をさせると堅物になってしまう」・・・
このように強く出られたとしても、本当にご主人は教育について学んだうえでそう言っているのでしょうか?
ご自身の経験や、ちょっと聞いた話を鵜呑みにしているだけの可能性もあります。
ですから、あなたがひるむ必要もなく、「自分が教育の責任者である。だから、私の子供は私が導く」と腹をくくることが大切です。
そして、責任者だからこそ、「子育ての結果には、自分が責任を持つ」という覚悟を持つことが大切です。
この覚悟については、必要に応じてご主人に伝えても良いですし、心のなかに持っておくだけでも大丈夫です。
この覚悟を決めることで、あなたの発言や態度が変わってきます。
女性は、男性に強く出られると引き下がってしまう傾向にありますが、それがなくなっていきます。
ご主人に何かを言われたとしてもそれを断固と突っぱねるようになれますし、その変化にご主人が気付くので理不尽な口出しをしなくなっていきます。
なお、私の母親もこういう覚悟を決めて私のことを育ててくれました。
そして、教育の責任者だと思ったからこそ、思い切った行動を取りました。
そちらをご紹介しましょう。
【参考情報】発達的観点からみた母親の子育て意識の変化
事前相談 VS 事後報告
私は4歳から公文式に通い、小学校3年生から浜学園に通いました。
こちらに関して面白いエピソードがあります。
まずは公文式から。
私が公文式に通っていることを父親が知ったのは小学校1年生の時です。
小学校1年生のときに、「成績が上位の人が集まる会」みたいなものがありました。
その時に私の母が、「貴文は公文式に通っているのよ」と伝えたそうです。
つまり3年間以上のあいだ、私の父は、私が公文式に通っていたことを知らなかったということになります。
次に浜学園について。
私が浜学園に通っていることを私の父親が知ったのは、私が小学校4年生のときです。
私の父親が運動会に来ていていたときに、「そういえば、お子さん浜学園ですごく成績が良いですね!」と別の保護者から言われたことで、初めて私が浜学園に通っていることを知ることになりました。
さすがに驚いたみたいですが、まあ悪い話ではなかったのでそんなに怒らなかったようです(笑)
このような2つのエピソードをご紹介させていただきましたが、「熊野先生のお母さん結構大胆なことをするな」と思われたかもしれませんね。
しかし、私の母親にとってはこれしか選択肢がなかったようです。
もし、私が公文式に通う前に、「貴文を公文式に行かせようと思うけど行かせても良いですか?」と事前に相談していたなら私の父親は反対したかもしれません。
あまり教育に関して深い理解があるわけではなかったので、「そんなお金を使うくらいならきちんと貯金しておけ!」と頭ごなしに反対されていた可能性があります。
もちろんこれは浜学園の時も同様で、事前に相談をしていたら父親に反対されていた可能性があります。
だからこそ私の母親は、「事前に相談して許可を取る」という選択肢ではなく、「黙って通わせてあとで報告する」という選択肢をとったわけです。
何か新しい教育を始める際には、
1.事前にご主人に相談をして許可を取る
2.とりあえず黙ってやってみてあとで事後報告する
この2つの選択肢があります。
もちろんどちらを選択するかはあなたの自由ですし、「何が正しくて、何が間違っている」というのはありません。
しかし1の選択肢を取った時点で、「あなたが本当に望んでいる教育法を、お子さんに施してあげられない可能性が出てきてしまう」というリスクがあることを念頭に置いておくことは、とても大切なのではないかと思います。
さて、話が長くなってきましたが最後に大切なお話をしましょう。
【参考情報】夫婦のコミュニケーションが関係満足度に及ぼす影響
相手を理解するから、理解される
上でご紹介させていただいたMさんのように、ご主人から教育方針を頭ごなし否定されると、
「何もわかっていないくせに・・・。」
「普段から仕事で外にいて子供を全然見ていないくせに・・・。」
こんな気持ちになられるかもしれません。
頭ごなしに否定されると、とても悔しい気持ちになってしまいます。
身内に敵がいるような気持ちになり、わが子の未来に対して不安になってくることもあります。
私が指導している方のなかには、「このまま、私が子供と2人で家を出ようとすら思います」という気持ちになるほど追い詰められた方もおられます。
そんな方にお伝えしたいことがあります。
それは、「ご主人も同じ気持ちかもしれない」ということです。
あなたとご主人が真逆なのですから、ご主人も心のなかでは、
「おれは自由に子育てしてやりたい。勉強に束縛するのではなくて伸び伸びとさせてやりたい。どうして妻は、そんなに勉強ばかりをさせるんだろうか?仕事で忙しいのに、家庭のこともすごく不安だな・・・。」
こんな葛藤を抱えているかもしれません。
つまり、ご主人だけが悪者なのではなくお互いに価値観が違うということなんです。
そんな状況で、あなたがすべきことは、「ご主人の価値観を理解しようとする」という姿勢を見せることだと思います。
それは、あなたが折れてご主人に迎合することではありません。
「こういう部分は理解できる」
という部分を見つけていくことです。
たとえば、Mさんのご主人のように、「勉強をさせたくない」という方の中には、
・自然でたくさん遊ばせてあげたい
・動物と触れ合う経験をさせてあげたい
・自分で農作物を作る経験を通して、農業を体験させてあげたい
・どんな時代のなかでも自分で答えを出せる子に育てたい
・友達の気持ちを理解できる優しい子に育ててあげたい
こういう要素が含まれていることも結構あるんですね。
「勉強をさせたくない」という言葉ひとつとってもその裏にはいろんな意図があるのです。
そして、ここで挙げたような部分なら、「子供に勉強をしっかりさせたい」というあなたにとっても共感できるのではないでしょうか。
お互いに対立して話し合わなければいつまでも平行線のままです。
しかし、お互いに理解しあう姿勢を見せ、本音で話し合うことで、「こういうことが言いたかったんだ」「この部分は、意外と同じ意見だな」という部分が見えてきて、相手に歩み寄れるようになれます。
このような気持ちが芽生えれば、「ここは譲ってあげようか」「そう考えるのも分かるような気がする」という気持ちになってくるのです。
全く反発し合っているとお互いが傷つけあってしまいます。
でも、少しでも理解し合う気持ちがあると、お互い譲歩し合うようになれるのです。
その第一歩が、「あなたがご主人のことを知ろうとして、受け入れることができる部分を探す」ということなんですね。
ご主人の教育方針の10%でも良いので理解し、受け入れてみてください。
相手を受け入れたうえであれば、あなたの意見を主張したとしても、聞いてもらえやすくなっていくと思います。
また、「子供を高学歴に育てる」からといって、幼児期に勉強ばかりさせるわけではありません。
・教育熱心=子供の自由を奪う
という図式ではありません。逆にこのようにお考えになっておられるのであれば、それは教育に対しての理解が不足していると、私は思います。
これは子供を医者にした親、灘中学に合格させた私たちの講師が口を揃えて言っていることですが、小さなお子さんにとっては、そもそも勉強と遊びの境目はありません。
「遊びの中からいかに学ばせるか?」「勉強を遊びのように取り組ませることができるか?」ということこそが、お子さんの教育の肝になるので、そこはしっかりと押さえておくことが重要です。
【参考情報】共感性の発達とその意義
こちらのページでは、「夫婦で教育方針が合わない場合の考え方」「幼児教育に理解を示してくれない夫への対処法」というテーマについてお話しましたが、幼児教室ひまわりでは、お子さまの脳を鍛える具体的な方法や難関中学に合格するための勉強法などを、オンライン講座やメールマガジンで公開しています。
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