医者になるには?医学部6年間・医師国家試験・研修医までの流れを経験者が解説
最終更新日 2026年10月09日
記事執筆者:熊野貴文
幼児教室ひまわり塾長・医師。灘中学・灘高校を経て大阪大学医学部に現役合格し、大学在学中は塾講師・学習アドバイザーとして約1,100人を指導。自ら難関受験を経験した子供側の視点と、保護者への教育相談、東大・医学部へ導いた親や各分野の専門家の知見をもとに、今のわが子に何を優先し、どう実践するかを具体的に発信している。
幼児教室ひまわりの熊野です。
私は灘中学・灘高校を経て大阪大学医学部へ現役で進学し、6年間医学を学びました。医学部の最終学年で医師国家試験を受験し、卒業後に合格発表を迎え、医師免許を取得しました。
そのため、「医者になるには、実際にどのような道を進むのか」は、自分自身が経験してきたことでもあります。
2014年に幼児教室ひまわりを創業してからは、子どもの学力や進路について保護者の方からご相談をいただく中で、
「子どもが医者になりたいと言っています。実際には、どのような道を進むのでしょうか」
「医学部に入れば、ほぼ医者になれると考えてよいのでしょうか」
「医学部では6年間、何を勉強するのでしょうか」
「医師国家試験に合格したら、すぐに一人前の医者として働くのでしょうか」
といったご質問をいただくことがあります。
医者という職業を考えると、どうしても「医学部に合格できるか」に意識が向きやすいと思います。
確かに、医学部への合格は大きな関門です。
しかし、実際に医者になるまでの道筋を振り返ると、医学部合格はゴールではありません。むしろ、そこから本格的な医学の学びが始まります。
一般的な国内のルートでは、大学の医学部医学科などで6年間学び、共用試験や臨床実習などを経験します。そして最終学年で医師国家試験を受験し、医学部を卒業します。
国家試験に合格したあと、医師免許を申請し、医籍に登録されることで医師免許を取得します。さらに、診療に従事しようとする医師には、その後2年以上の臨床研修があります。
この記事では、実際に大阪大学医学部で学び、医師国家試験を受験した私自身の経験も交えながら、
医者になるには、どのような段階を通るのか
を順番にお話しします。
医学部を目指している本人はもちろん、「将来、子どもが医者を目指すかもしれない」という保護者の方にも、まず全体像を知っていただければと思います。
医者になるには?まず全体の流れを知ろう
日本で医者になる一般的な流れを、大きく整理すると次のようになります。
大学の医学部医学科・医科大学などへ入学する
↓
6年間、医学を学ぶ
↓
共用試験や臨床実習などを経験する
↓
医学部の最終学年で医師国家試験を受験する
↓
医学部を卒業する
↓
医師国家試験に合格する
↓
医師免許を申請し、医籍に登録される
↓
診療に従事する場合は、2年以上の臨床研修を受ける
まず知っておきたいのは、
「医学部に入ること」と「医者になること」は同じではない
ということです。
医学部医学科は6年制です。
一般的な大学の学部は4年制ですが、医師を養成する医学課程では6年間かけて、基礎医学から臨床医学、実際の診療現場での臨床実習まで学びます。
そして、医学部の最終学年になると、卒業見込みの学生も要件を満たしたうえで医師国家試験を受験します。
国家試験を受験したあとに医学部を卒業し、国家試験に合格したら、医師免許を申請します。その後、医籍に登録されることで医師免許を受けます。
つまり、医学部を卒業してから初めて医師国家試験を受験するわけではありません。
医学部6年生の最終段階で国家試験を受験し、卒業と国家試験合格を経て、医師免許取得へ進む
というのが一般的な流れです。
そして、医師免許を取得して診療に従事しようとする場合には、その後2年以上の臨床研修があります。
ですから、
「医者になるまで何年かかるのですか?」
という質問に対しては、少し分けて考える必要があります。
高校卒業後に医学部へ進んだ一般的なケースで考えると、医学部で学ぶ期間は6年間です。
その最終学年で医師国家試験を受験し、医学部卒業と国家試験合格を経て、医師免許取得へ進みます。
そのため、「医師免許を取得するまで」という意味では、まず医学部での6年間が大きな目安になります。
一方、実際に診療に携わる医師として基本的な力を身につけるところまで考えるなら、その後の2年以上の臨床研修も含めて見る必要があります。
ここを一緒にして、
「医者になるには8年かかる」
とだけ説明してしまうと、医師免許を取得する時点と、臨床研修を終える時点の違いが分かりにくくなります。
医者になるまでの道筋は、一つずつ段階を分けて理解することが大切です。
医学部の6年間では何を学ぶのか?
では、医学部に入学してからの6年間では、実際にどのようなことを学ぶのでしょうか。
私が大阪大学医学部で学んでいた頃にも、
・一般教養
・基礎医学
・臨床医学
・解剖実習
・病院での臨床実習
など、さまざまな段階がありました。
ただし、ここで注意していただきたいことがあります。
医学部6年間の具体的なカリキュラムや、何年生で何を学ぶかは、大学によって異なります。
そのため、
「1年生は必ず一般教養」
「2年生から必ず基礎医学」
「4年生から必ず臨床実習」
というように、全国の医学部が同じ順番で進むわけではありません。
現在は、文部科学省が「医学教育モデル・コア・カリキュラム」を示しており、それを踏まえながら各大学がカリキュラムを組んでいます。
大きな流れとして理解するなら、医学部では次のような内容を学んでいきます。
基礎医学で人体や病気の土台を学ぶ
医学を学び始めると、まず人間の体がどのようにできていて、どのように機能しているのかという基礎を学んでいきます。
たとえば、
・解剖学
・生理学
・生化学
・薬理学
・病理学
・微生物学
などです。
医者になると、患者さんの症状を見て、体の中で何が起きているのかを考えなければなりません。
そのためには、「この病気にはこの薬」という知識を暗記するだけでは足りません。
正常な人体がどのような構造をしているのか。
臓器がどのように働いているのか。
病気になると、そこにどのような変化が起こるのか。
薬は体の中でどのように作用するのか。
そうした土台から学びます。
私自身の学生時代にも、献体による解剖実習がありました。
実際の人体から学ばせていただく経験は、教科書や図だけで人体の構造を勉強するのとはまったく違います。
医学を学ぶということは、単に試験のための知識を増やすことではありません。
人の体や命について学ばせていただくことなのだ
と感じた経験の一つでした。
臨床医学では、病気の診断や治療について学ぶ
基礎医学を土台にしながら、さらに内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、精神科など、それぞれの診療分野について学んでいきます。
ここでは、
「どのような症状が出るのか」
「何を調べれば診断につながるのか」
「どのような検査を行うのか」
「どのような治療を選択するのか」
といった、実際の診療につながる内容を学びます。
医学部に入る前には、
「医学部は、とにかく暗記する量が多い」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。
確かに、覚えなければならない知識は非常に多くあります。
ただ、実際に医学を学ぶと、それだけではないことが分かります。
症状や検査結果を見ながら、
「この患者さんの体の中では何が起きているのか」
「いくつか考えられる病気の中で、何を根拠に判断するのか」
と考えていかなければなりません。
知識を持つことに加えて、得られた情報を整理し、そこから考えることも医学では必要になります。
共用試験を経て、診療参加型臨床実習へ進む
医学部では、医学生が診療参加型臨床実習へ進む前に、必要な知識や技能が身についているかを確認する共用試験があります。
代表的なものが、
CBT(Computer Based Testing)
と、
臨床実習前OSCE
です。
CBTでは主に医学知識を評価し、OSCEでは医療面接や身体診察、基本的な臨床手技など、臨床実習に必要な技能や態度を評価します。
2023年度から、医学系CBTと臨床実習前OSCEへの合格が診療参加型臨床実習へ進むために必要となり、2025年度からは共用試験への合格が医師国家試験の受験要件にもなっています。
つまり、医学部では、
大学に入る試験
と、
最終学年で受ける医師国家試験
だけを乗り越えればよいわけではありません。
医学部の6年間の中にも、医師として必要な知識や技能を一つずつ確認しながら進んでいく段階があります。
病院での臨床実習では、患者さんから医学を学ぶ
共用試験を経ると、病院などで診療参加型の臨床実習に進んでいきます。
ここでは、内科や外科、小児科など、さまざまな診療科を回りながら、実際の診療現場で学びます。
私自身も医学部時代、病院で多くのことを学びました。
教科書を読めば、病気の症状や治療法は書かれています。
しかし、実際の患者さんは、教科書通りに症状を訴えるわけではありません。
どのように話を聞くのか。
何を確認するのか。
患者さんが何を不安に感じているのか。
医師としてどのように説明するのか。
こうしたことは、実際の診療現場で初めて分かる部分もあります。
医学部の6年間は、「国家試験に合格するための勉強期間」だけではありません。
医師として人を診るために必要な知識・技能・姿勢を少しずつ身につけていく期間
と考えた方が、実際に近いと思います。
医学部の最終学年で医師国家試験を受ける
医学部で必要な教育課程を学び、卒業が近づく最終学年になると、次の大きな関門となるのが医師国家試験です。
国内の医学部では、必要な条件を満たした卒業見込みの学生が、最終学年で医師国家試験を受験するのが一般的です。
大きな流れとしては、
医学部の最終学年で医師国家試験を受験する
↓
医学部を卒業する
↓
医師国家試験の合格発表を迎える
↓
合格後、医師免許を申請する
となります。
医師国家試験では、臨床上必要な医学や公衆衛生について、医師として必要な知識や技能が問われます。
医学部受験という大きな試験を突破して入学したあとも、6年間医学を学び、その最後に医師国家試験という大きな関門があります。
ただし、ここでも一つ誤解しやすいことがあります。
医師国家試験に合格しただけで、自動的に医師免許が届くわけではない
「医師国家試験に合格すれば、その瞬間に医師免許がもらえる」
と思われることがありますが、正確には少し違います。
医師国家試験に合格したあと、医師免許の申請を行い、医籍に登録されることで医師免許を受けます。
つまり、
医学部最終学年で医師国家試験を受験
↓
医学部卒業
↓
医師国家試験合格
↓
医師免許の申請
↓
医籍への登録・医師免許取得
という流れです。
ここまで来ると、法律上、医師としての資格を得る大きな区切りになります。
しかし、今回の記事でお伝えしたいのは、
医師免許を取得した時点でも、医師としての学びが終わるわけではない
ということです。
診療に従事しようとする医師には、その後、2年以上の臨床研修があります。
医師国家試験は大きな関門ですが、国家試験への合格を「医師としての完成」と考えるのではなく、その先にも実際の診療現場で経験を積んでいく段階があると理解しておくことが大切です。
次の章では、医師免許を取得したあとに始まる初期臨床研修と、その後の専門研修について説明します。
さらに、私自身が大阪大学医学部で実際に見てきた「医学部合格のその先」についてもお話しします。
医師免許取得後、診療に従事する医師は臨床研修へ進む
医師国家試験に合格し、医師免許を取得したあと、診療に従事しようとする医師は、2年以上の臨床研修を受けることが医師法で定められています。
ただし、
「医師免許を取った=一人前の医師として完成した」
というわけではありません。
一般には、この時期の医師を「研修医」と呼ぶことが多いと思います。
臨床研修では、最初から一つの専門分野だけに限定するのではなく、幅広い診療経験を積みながら、医師として必要な基本的な診療能力を身につけていきます。
学生時代にも病院で臨床実習を行いますが、医師免許を取得した後の臨床研修では、医師として患者さんの診療に関わる立場になります。
もちろん、最初からすべてを一人で判断するわけではありません。
指導医のもとで、
・患者さんから話を聞く
・診察する
・必要な検査を考える
・診断について考える
・治療方針を検討する
・患者さんやご家族に説明する
といった経験を積み重ねていきます。
医学部で6年間学び、医師国家試験に合格したとしても、実際の診療現場では初めて経験することが数多くあります。
私自身も医学を学んで感じましたが、知識として知っていることと、実際の患者さんを前にして適切に判断できることは同じではありません。
だからこそ、医学部卒業後にも臨床研修という期間が設けられています。
初期臨床研修のあと、専門医を目指す医師は専門研修へ進む
2年間の初期臨床研修を終えたあと、専門医を目指す医師は、自分が進みたい診療領域を選び、専門研修へ進みます。
以前は、この時期の研修を「後期研修」と呼ぶことも多くありましたが、現在の専門医制度では「専門研修」、そこで研修を受ける医師を「専攻医」と呼ぶのが一般的です。
日本専門医機構では、専門医を目指す医師は19の基本領域から進む領域を選び、専門研修プログラムに所属して、指導医のもとで原則3~5年間の研修を積む仕組みになっています。領域によって研修年数は異なります。
大きな流れで見ると、
医学部の最終学年で医師国家試験を受験する
↓
医学部を卒業し、医師国家試験に合格する
↓
医師免許を取得する
↓
2年以上の初期臨床研修を受ける
↓
専門医を目指す場合は、希望する領域の専門研修へ進む
という流れになります。
ここまで見ると、医師国家試験に合格した時点はもちろん、2年間の初期臨床研修を終えた時点でも、医師としての学びが終わるわけではないことが分かります。
「直美」が議論されている背景
近年、初期臨床研修を終えた直後に、形成外科や皮膚科などで専門研修を積む前に美容医療へ進む医師について、「直美(ちょくび)」という言葉が使われることがあります。
ここで誤解していただきたくないのは、美容医療へ進むこと自体が悪いという話ではありません。
美容医療も医療の一分野であり、そこで専門性を高め、患者さんと真剣に向き合っている医師もいます。
一方で、私は医師としてのキャリアを考えたときに、初期臨床研修を終えてすぐ美容医療だけに進むことについては、少しもったいないと感じるところがあります。
医師になったばかりの時期は、さまざまな病気や患者さんを経験し、先輩医師から指導を受けながら、診察、検査、治療、急変時の対応などを身につけていく大切な時期だからです。
形成外科や皮膚科などで専門研修を積んだあとに、美容医療へ進む道もあります。
先に幅広い臨床経験や専門性を身につけておけば、その経験は美容医療でも生かせますし、将来、別の診療領域へ進みたいと考えたときにも選択肢を持ちやすくなります。
反対に、医師になって早い段階から一つの領域だけで経験を積んでいると、あとから保険診療や別の専門領域へ進みたいと思ったときに、改めて研修を積み直す必要が出てくることがあります。
ですから、私が「もったいない」と感じるのは、美容医療そのものを否定しているからではありません。
医師として経験を積める若い時期に、できるだけ広い土台を作ってから専門分野を選んでも遅くないのではないか
と考えているからです。
医師という仕事は、国家試験に合格したら完成するものでも、初期臨床研修を終えたら完成するものでもありません。
その後、どの分野を選び、どのような指導を受け、どのような患者さんを診ながら経験を積んでいくかによって、医師としての専門性は少しずつ作られていきます。
医学部合格はゴールではない|私が大阪大学医学部で実際に見たこと
ここまで、医者になるまでの制度上の流れを説明してきました。
ここからは、私自身が大阪大学医学部で実際に経験したことについてお話しします。
私が在籍していた学年には、約90人の同級生がいました。
その中で、私が知る限り、途中で医学部を辞めた人が2人いました。
また、2人の同級生が留年し、下の学年と一緒に学ぶことになりました。その2人は、その後医学部を卒業し、医師国家試験に合格して医師として働いていました。
もちろん、これはあくまで私が在籍していた一つの学年での経験です。
「医学部では何%の学生が辞める」「何%が留年する」といった全国的な割合を示すものではありません。
ただ、私にとっては、
「医学部に合格したから、その後は何も心配しなくてよいわけではない」
と実感する経験になりました。
医学部に合格するためには、高い学力が必要です。
しかし、医学部に入ってからも、覚えなければならないこと、理解しなければならないことは非常に多くあります。
試験もあります。
実習もあります。
そして何より、6年間という長い期間、医学を学び続けなければなりません。
私の高校時代からの同級生にも、医学部へ進んだものの、途中で医学の勉強を続けることをやめた人がいました。
本人にしか分からない事情や考えがあったと思いますので、外から単純に理由を決めつけることはできません。
ただ、この経験から私が強く感じたことがあります。
それは、
医学部に入れるだけの学力があることと、本人が医者になりたいと思い続けられることは、別の問題だ
ということです。
保護者の立場からすると、
「まず医学部に入れるくらいの学力をつけなければ」
と考えるのは自然です。
私自身も、将来の選択肢を広げるために学力を身につけておくことは大切だと考えています。
しかし、医学部に合格させることそのものを最終目的にしてしまうのは違います。
医学部に入ったあとには、6年間の医学教育があります。
その中で共用試験や臨床実習があり、最終学年では医師国家試験を受験します。
卒業と国家試験合格を経て医師免許を取得したあとにも、臨床研修があります。
だからこそ、医者になるまでの道筋を考えるときには、
「この子は医学部に入れるだろうか」
だけではなく、
「本人は医学を学びたいと思っているだろうか」
「医師という仕事について、どのように感じているだろうか」
という視点も必要だと思います。
医者になるまでの道筋で、保護者が見落としやすいこと
ここまでお伝えしたように、医学部合格は医師になるまでの入口です。
そのうえで、保護者の方が子どもの進路を考えるときには、ほかにも見落としやすいことがあります。
難関中学に進むことが必須だと思ってしまう
医者になるための制度上の条件に、
「難関中学を卒業していること」
はありません。
もちろん、難関中高一貫校などには、医学部を目指す生徒が多かったり、大学受験に向けた環境が整っていたりすることがあります。
中学受験という選択がお子さんに合う場合もあるでしょう。
しかし、
難関中学に入らなければ医者になれないわけではありません。
中学受験をせずに医学部を目指す道もあります。
大切なのは、
「医者にしたいから難関中学へ」
と一本道で考えることではなく、子どもの現在の学力、性格、本人の希望、家庭の状況などを見ながら進路を考えることです。
この部分は、「子どもを医者にするためにどのような進路を考えるか」という別のテーマになりますので、詳しくは関連記事でお話ししています。
【関連記事】子供を医者にするには?
学力さえあれば医者になれると思ってしまう
医学部受験には高い学力が求められます。
だからこそ、子どもが将来医学部を目指したいと思ったときに、その選択肢を持てるだけの学力を身につけておくことには意味があります。
ただ、学力が高いことと、本人が医学を学び続けたいと思えることは別の問題です。
医学部に合格できる学力があったとしても、その後6年間医学を学び続けるのは本人です。
だから私は、
「医学部に入れる頭があるか」だけでなく、「本人が医学を学びたいと思っているか」も同じくらい大切
だと考えています。
早く医者になると決めさせなければ間に合わないと思ってしまう
もう一つ見落としやすいのが、
子どもに早く医者になると決めさせなければならない
と思ってしまうことです。
医学部受験には準備が必要ですので、早めに進路について考えることにはメリットがあります。
しかし、
「高校1年生までに決めなければいけない」
「高校2年生までに医者になると決断できなければ遅い」
という決まりがあるわけではありません。
むしろ大切なのは、
早く決めることよりも、本人が医師という仕事について知ったうえで選ぶこと
だと思います。
医者になるということは、医学部受験に合格することだけではありません。
6年間医学を学び、医師国家試験を受け、その後も患者さんと向き合いながら経験を積んでいく仕事です。
子どもがその道を考えるのであれば、
「医学部に行きなさい」
と結論を先に渡すのではなく、
「医者はどんな仕事なのだろう」
「医学部では何を学ぶのだろう」
「なぜ医者になりたいのだろう」
と一緒に考えていくことも大切ではないでしょうか。
子どもが「医者になりたい」と言ったときに親ができること
子どもが、
「将来、医者になりたい」
と言ったときには、すぐに受験の話へ進む必要はありません。
まずは、医師という仕事と、そこまでの道筋を一緒に知ることから始めてよいと思います。
医学部ではどのようなことを学ぶのか。
医師はどのような場所で働いているのか。
どのような診療科があるのか。
医師になったあと、どのように研修や経験を積んでいくのか。
大学や医学部の公式情報を見たり、身近に医師がいれば仕事について話を聞いたりしながら、少しずつ具体的なイメージを持つことができます。
その過程で、
「人の命に関わる仕事をしたい」
「病気についてもっと知りたい」
「やはり自分は別の仕事に興味がある」
と、本人の考えも少しずつ見えてきます。
成長する中で志望する職業が変わることもあります。それ自体は問題ではありません。
保護者ができることは、子どもの職業を早く決めることではなく、
本人が将来やりたいことを見つけたときに、できるだけ多くの選択肢を持てる状態を作っておくこと
だと私は考えています。
幼少期から何を大切にすればよいのか、医学部を目指せる学力をどのように考えるのかについては、別の記事で詳しくお話ししています。
【関連記事】子供を医者にするには?
【関連記事】子供を医者にしたいとき、幼少期に大切なこと
医者になるには?よくある質問
Q.医者になるまで何年かかりますか?
高校卒業後に医学部医学科へ進む一般的なケースでは、医学部で学ぶ期間は6年間です。
最終学年で医師国家試験を受験し、医学部卒業と国家試験合格を経て、医師免許を取得します。
さらに、診療に従事しようとする医師には2年以上の臨床研修があります。
そのため、「医師免許を取得するまで」と「基本的な臨床研修まで」を分けて考えると分かりやすいでしょう。
Q.医学部を卒業すれば必ず医者になれますか?
医学部を卒業しただけで、自動的に医師免許を取得できるわけではありません。
医学部の最終学年で医師国家試験を受験し、卒業と国家試験合格を経たあと、医師免許を申請して医籍に登録される必要があります。
また、医学部在学中にも共用試験や臨床実習など、必要な段階があります。
医学部に合格した時点で「医者になれることが確定する」と考えるのではなく、その後にも複数の段階があると考えておきましょう。
Q.医師国家試験に合格したら、すぐ一人で診療するのですか?
医師国家試験に合格し、医師免許を取得したあと、診療に従事しようとする医師には2年以上の臨床研修があります。
研修医は、指導医のもとでさまざまな診療科を経験しながら、医師として必要な基本的な診療能力を身につけていきます。
国家試験合格は非常に大きな節目ですが、そこから実際の診療現場で経験を積んでいくと考えた方がよいでしょう。
Q.初期臨床研修が終わったら、研修は終わりですか?
すべての医師に専門医資格が必要というわけではありませんが、専門医を目指す医師は、初期臨床研修のあとに基本領域を選び、専門研修へ進みます。
日本専門医機構の基本領域では、専門研修の期間は領域によって原則3~5年間です。
その後も、専門分野で経験を積んだり、さらに細かな専門領域へ進んだりする医師もいます。
医師は、免許を取った時点ですべての学びが終わる仕事ではありません。
Q.医者になるには何歳までに進路を決める必要がありますか?
「○歳までに医者になると決めなければならない」という制度上の決まりはありません。
ただし、医学部受験には高い学力が求められるため、医学部への進学を考えるのであれば、受験科目や志望大学などについて早めに情報を集めるメリットはあります。
一方で、子どもに早く職業を決めさせること自体を目的にする必要はありません。
大切なのは、医師という仕事や医学部での学びについて知ったうえで、本人が自分の進路として考えていくことです。
まとめ|医学部合格ではなく「医者になるまで」を見ておく
医者になるには、まず大学の医学部医学科などで6年間学びます。
その間に共用試験や臨床実習などを経験し、最終学年で医師国家試験を受験します。
その後、医学部を卒業し、国家試験に合格したら医師免許を申請します。医籍への登録を経て医師免許を取得し、診療に従事しようとする場合には2年以上の臨床研修を受けます。
さらに、専門医を目指す医師は、その後も専門研修へ進み、経験を積んでいきます。
こうして全体を見ると、
医学部に合格することは、医者になるためのゴールではない
ということが分かると思います。
私自身、大阪大学医学部で6年間学びました。
その中では、医学部を途中で辞める人も、留年して学び直す人も実際に見てきました。
また、医師免許を取得したあとにも初期臨床研修があり、その先には専門分野で経験を積んでいく道があります。
だからこそ、保護者の方には、
「どうすれば医学部に入れられるか」
だけでなく、
「その先にどのような学びや仕事があるのか」
まで知っていただきたいと思っています。
医者になるには高い学力が必要です。
しかし、それだけではありません。
医学を学ぶこと。
患者さんと向き合うこと。
医師になったあとも経験を積み、知識や技能を高めていくこと。
そうした長い道のりがあります。
もしお子さんが「医者になりたい」と話したときには、最初から進路を決めるのではなく、まず一緒に医師という仕事や、そこまでの道筋を知るところから始めてみてください。
そのうえで本人が、
「それでも医者を目指したい」
と思うのであれば、その選択肢を持てるように支えていく。
それが、医者を目指す子どもに対して保護者ができる大切な関わり方の一つだと、私は考えています。
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