子供の愛情不足のサインとは?特徴だけで決めつけない見方と接し方
最終更新日 2026年09月08日
記事執筆者:熊野貴文
幼児教室ひまわり塾長・医師。灘中学・灘高校を経て大阪大学医学部に現役合格し、大学在学中は塾講師・学習アドバイザーとして約1,100人を指導。自ら難関受験を経験した子供側の視点と、保護者への教育相談、東大・医学部へ導いた親や各分野の専門家の知見をもとに、今のわが子に何を優先し、どう実践するかを具体的に発信している。
幼児教室ひまわりの熊野です。
私は灘中学・灘高校から大阪大学医学部に進み、学生時代から塾講師や学習アドバイザーとして教育に携わってきました。2014年に幼児教室ひまわりを創業し、現在は塾長として、子どもの能力を伸ばす家庭での関わり方についてお伝えしています。
「最近、子どもが何度も『見て、見て』と言うようになった」
「下の子を抱っこすると、上の子まで急に甘えてくる」
「仕事が忙しく、一緒に過ごす時間が短いので、寂しい思いをさせているのではないか」
「わがままや怒ることが増えたのは、私の愛情不足が原因なのだろうか」
子どもの様子が以前と変わると、このように不安になる保護者の方もいるのではないでしょうか。
幼児教室ひまわりでも、「最近甘えが強くなったのですが、愛情が足りないのでしょうか」「仕事をしていて一緒にいる時間が短いことが原因でしょうか」といったご相談をいただくことがあります。
インターネットで「愛情不足の子どもにはどのような特徴があるのか」「どんなサインに気づけばよいのか」と調べると、さまざまな行動が愛情不足の特徴として紹介されています。
そのため、わが子にも当てはまるものがあると、
「やはり私の愛情が足りなかったのではないか」
と不安になってしまう方もいるでしょう。
ただ、最初にお伝えしておきたいことがあります。
甘える、親の気を引こうとする、わがままを言うといった行動だけで、その子が「愛情不足」であると判断することはできません。
そのようなご相談を受けたとき、私たちが最初から「もっと愛情を与えましょう」と考えることもありません。
その行動はいつ頃から始まったのか。
どんな場面で強くなるのか。
入園や入学、きょうだいの誕生など、生活の変化はなかったか。
園や学校ではどのように過ごしているのか。
睡眠や食欲に変化はないか。
一つずつ分けて見ていくと、「愛情不足」という言葉だけでは見えなかった背景が分かることがあります。
そして、もう一つ知っておいていただきたいのは、子どもが親の愛情や関心を何度も求めること自体は、不自然なことではないということです。
この記事では、愛情不足ではないかと心配されやすい子どもの行動を整理したうえで、「愛情が足りているか」を親が採点するのではなく、今のお子さまの様子をどのように見ればよいのか、家庭ではどのように関わればよいのかをお伝えします。
【この記事で分かること】
- 甘え・わがまま・気を引く行動は、愛情不足のサインなのか
- 「見て見て」が多い子どもの気持ちをどう受け止めるか
- 仕事やきょうだいのお世話で、関わる時間が足りないと感じたときの考え方
- 愛情不足と決めつける前に確認したい4つのこと
- 今の親子関係と子どもの将来への影響をどう考えるか
- 家庭で愛情を伝える5つの関わり方と具体的な声かけ
- 甘えを受け止めることと、要求をすべて通すことの違い
- 子どもの変化が続くときの相談の目安と相談先
なお、この記事では「愛情不足」を医学的な診断名として扱いません。保護者の方が「自分の関わりが足りないのではないか」と不安になる場面を表す、日常的な言葉として使います。
また、後に触れる「アタッチメント(愛着)」と、「見て見てが多い」「甘えが増えた」といった一つの行動を、同じものとして扱うこともできません。
この記事の目的は、愛情不足かどうかを判定することではなく、行動が始まった時期、行動が強くなる場面、生活環境の変化、睡眠や食欲などを分けて見ながら、今のお子さまに必要な関わりを考えることです。
愛情不足では?と心配されやすい子どもの3つの行動
愛情不足について調べると、子どものさまざまな行動が「愛情不足のサイン」として紹介されています。
中でも、保護者の方が心配しやすいのは、次のような行動です。
ただし、これから紹介する行動は、愛情不足であれば必ず見られる特徴でも、見られたら愛情不足だと判断できるサインでもありません。
まずは、保護者の方が「愛情が足りないのでは」と心配しやすい行動として見てください。
人の気を引こうとする行動が増える
「お母さん、見て」
「ねえ、こっちに来て」
「今すぐ一緒にやって」
このように何度も親を呼んだり、親の反応を確かめるような行動が増えたりすると、「もっと自分に関心を向けてほしいのだろうか」と感じることがあります。
ときには、注意されると分かっていることをわざとしたり、きょうだいにちょっかいを出したりして、大人の反応を引き出そうとしているように見えることもあるでしょう。
もちろん、子どもが親との関わりをいつも以上に求めている場合もあります。
しかし、こうした行動があるからといって、すぐに「親の愛情が不足している」と結論づけることはできません。
疲れていて気持ちをうまく調整できない。
環境が変わって不安を感じている。
自分の気持ちをまだ言葉で十分に表現できない。
そのほかにも、さまざまな背景が考えられます。
大切なのは、「気を引く行動があるか」だけを見るのではなく、いつから、どのような場面で増えたのかを見ることです。
甘えが強くなる
以前は自分でできていたことを「やって」と言う。
急に抱っこを求める。
親のそばから離れたがらない。
このような姿を見ると、「何か寂しい思いをさせているのでは」と心配になることもあるでしょう。
しかし、甘えること自体は悪いことではありません。
子どもは成長の途中で、前に進んだり、少し戻ったりしながら育っていきます。疲れたときや環境が変わったときには、普段よりも安心できる大人との関わりを求めることがあります。
また、
「家ではそれほど甘えないのに、園の先生や祖父母にはよく甘える」
というだけで、
「親から十分な愛情を受けられていないため、ほかの大人に愛情を求めている」
と判断する必要もありません。
子どもが親以外にも信頼できる大人との関係を持っていること自体を、問題として見る必要はないでしょう。
わがままや怒りが増える
「今日は絶対にお母さんと一緒に行く」
「もっと遊びたい」
「下の子ばかり抱っこしないで」
「今すぐやって」
こうした要求や怒りが増えると、「愛情を確かめるために、わざと困らせているのでは」と考えることがあります。
実際に、その場では親の関心を求めていることもあるでしょう。
しかし、わがままや怒りにも、疲れ、眠さ、年齢相応の自己主張、環境の変化、きょうだい関係、園や学校での出来事など、さまざまな背景があります。
そのため、
甘える=愛情不足
わがまま=愛情不足
親の気を引く=愛情不足
というように、一つの行動と一つの原因を結びつけないことが大切です。
「見て見て」が多い=愛情不足とは限らない
ここで、幼児教室ひまわり副塾長の上田先生の子育て経験をご紹介したいと思います。
上田先生は、ご自身の子育てを振り返って、子どもから何度も「見て、見て」と言われたことが印象に残っているそうです。
絵を描いたら、
「お母さん、見て」
何かできたら、
「ねえ、見て」
遊んでいる途中でも、
「こっち見て」
一度しっかり見ても、しばらくするとまた「見て」と言います。
きょうだいがいれば、一人が「見て」と言った途端に、もう一人も「私も見て」とやってきます。
上田先生自身も、そんな子どもたちを見ながら、
「まだこの子には愛が足りないのかな。もっとほしいのかな」
と思ったことがあったそうです。
しかし、子育てを続ける中で、少し違う見方をするようになりました。
子どもが何度も「自分を見てほしい」「自分に関心を向けてほしい」と求めるのは、必ずしも愛情が不足しているからではない。子どもは、そもそも何度も大人とのつながりを求めるものなのではないか。
そう感じるようになったのです。
これは、上田先生個人の子育て経験から得た実感です。「見て見て」が多い子どもは愛情不足ではない、と一律に証明するものではありません。
一方で、子どもが身近な大人との関係の中で安心感を得ながら育つことや、子どもからの働きかけに大人が応答することの大切さは、公的・専門的な資料でも示されています。
こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」では、乳幼児が身近な養育者とのアタッチメントを通して安心感を得ることや、その安心を土台に、人や環境へ働きかけて遊びや体験へ向かう「安心と挑戦の循環」が大切だと整理されています。
また、ハーバード大学のCenter on the Developing Childは、幼い子どもが声、表情、しぐさなどで大人へ働きかけ、大人が視線や言葉などで応じる双方向のやり取りを「serve and return」と呼んでいます。こうした応答的な往復のやり取りは、脳の発達や、初期の言語・社会性を支えると説明されています。
これらの資料から、「見て」と言う回数によって、それまでに受けた愛情の量を判定できるわけではありません。大切なのは、今の子どもの働きかけにできる範囲で応じながら、ほかの生活上の変化も含めて様子を見ることです。
そのため、子どもが何度も「見て」と言ってくるときも、
「まだ求めるということは、これまでの愛情が足りなかったのだ」
と過去の愛情を採点するより、
「今、この子は私に関心を向けてほしいんだな」
と、そのときの気持ちとして受け止める方が、子どもの姿を具体的に見やすくなります。
【参考情報】こども家庭庁「はじめの100か月の育ちビジョン」
【参考情報】Center on the Developing Child at Harvard University「Serve and Return」
親が「愛情の量」を採点すると、子どもの姿を見誤りやすい
子育てをしていると、親はどうしても愛情を「量」で考えてしまうことがあります。
「毎日これだけ一緒にいるから大丈夫」
「毎日抱きしめているから十分」
「こんなにしているのに、どうしてまだ甘えるのだろう」
反対に、
「仕事で一緒にいる時間が短いから足りない」
「下の子に時間を取られているから、上の子は愛情不足かもしれない」
と考えることもあります。
しかし、愛情は、
「何時間一緒にいれば十分」
「何回抱きしめれば足りる」
というように、親だけが一律に量を決められるものではありません。
子どもによって、甘え方も、親の関心を求める頻度も、その表し方も違います。
親から見れば十分に関わったつもりの日でも、
「もっと一緒にいたい」
と言う子もいます。
そのとき、
「こんなにしているのに、まだ足りないの?」
と考えるより、
「今日はもう少し私とつながっていたいんだな」
と見た方が、子どもの気持ちは理解しやすくなります。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、子どもが求めるだけ親がすべて応じなければならない、という意味ではないことです。
子どもの気持ちを受け止めることと、すべての要求をかなえることは別です。
兄弟姉妹がいれば、親の関心を求め合うこともある
兄弟姉妹がいるご家庭では、このことがさらに分かりやすく現れる場合があります。
赤ちゃんを抱っこすると、上の子も抱っこしてほしがる。
一人を褒めると、もう一人も「私もできるよ」とやってくる。
米国小児科学会の保護者向け情報でも、新しい兄弟姉妹が生まれたときには、上の子が親の注意をこれまで以上に求めたり、一時的に幼い行動に戻ったりすることがあると説明されています。
ですから、兄弟姉妹が親の関心を求め合う姿を見ても、
「二人とも愛情不足なのだ」
と考える必要はありません。
ただ、
「今は私も見てほしいんだな」
と気づくきっかけにはできます。
そして、もう一つ重要なのは、子どもが求めることと、親がすべて応じることは同じではないということです。
「もっと遊びたい」と言われたら、
「もっと遊びたいんだね」
と気持ちは受け止める。
しかし、寝る時間なら、
「今日はここまで。また明日遊ぼう」
と伝えて構いません。
愛情を伝えることと、家庭のルールをなくすことは別です。
「愛情不足かも」と思ったときに確認したい4つのこと
では、子どもの様子がいつもと違い、「愛情不足なのでは」と心配になったときには、何を見ればよいのでしょうか。
幼児教室ひまわりでは、一つの行動だけから原因を決めるのではなく、次のように背景を分けて考えます。
1.その行動はいつから始まったのか
まず確認したいのは、以前から見られる行動なのか、最近急に変わったのかということです。
もともとよく甘える子が今日も甘えているのと、これまで一人でできていた子が突然「全部やって」と言うようになったのとでは、見方が変わります。
「甘える子だから」と性格だけで片づけず、反対に「甘えたから愛情不足」とも決めつけず、以前との変化を見ることが大切です。
2.どんな場面で強くなるのか
次に、「いつもそうだ」とまとめるのではなく、どんなときにその行動が出るのかを見ます。
たとえば、
下の子を抱っこしたときだけ「私も」と言う。
園から帰宅した直後だけ機嫌が悪い。
親が仕事の電話をしているときに何度も話しかけてくる。
勉強を始める時間になると急に甘える。
このように場面を具体的にすると、子どもが何を求めているのか、どこで困っているのかが少しずつ見えてきます。
「愛情不足」という大きな言葉で考える前に、その行動の前後で何が起きているのかを見ることが大切です。
3.家庭や園・学校で何か変化はなかったか
入園、入学、クラス替え、引っ越し、きょうだいの誕生、習い事の開始、友達関係の変化など、子どもの生活にはさまざまな変化があります。
大人にとっては小さな変化でも、子どもにとっては大きな負担になっていることがあります。
最近甘えが増えたのであれば、
「愛情が足りないのかな」
だけではなく、
「最近、この子の生活で何か変わったことはなかったかな」
という視点を持ってみてください。
4.睡眠や食欲など、ほかの変化はないか
最後に、一つの行動だけではなく、生活全体を見ます。
よく眠れているか。
食欲は変わっていないか。
園や学校へいつも通り行けているか。
遊び方や友達との関係に変化はないか。
「見て見て」が増えたという一つの行動だけなら、親との関わりをいつもより求めているだけかもしれません。
しかし、それと同時に眠れない、食欲が落ちている、園や学校へ行きたがらないなど、複数の変化が重なっているのであれば、別の困りごとが隠れていないかを見る必要があります。
愛情不足かどうかを判定することよりも、今この子に何が起きているのかを一つずつ見る。
これが、子どもの様子が気になったときに、まず大切にしたい考え方です。
愛情と子どもの発達・将来への影響をどう考える?
「今の関わり方が、この子の将来に悪い影響を与えたらどうしよう」
愛情不足について心配している保護者の方の中には、そこまで先のことを不安に感じている方もいると思います。
愛情不足について調べると、将来の人間関係や仕事、恋愛への影響まで説明されていることがあります。
しかし、子どもの将来を、幼少期の親子関係だけから単純に予測することはできません。
子どもは、生まれ持った気質、家庭環境、園や学校での経験、友人関係、その後に出会う人など、さまざまな影響を受けながら成長していきます。
一方で、幼い時期に、身近な大人との間で安心できる関係を築いていくことが大切であることは、研究でも示されています。
2024年に『Psychological Bulletin』で公表されたMadiganらのメタ分析では、174研究、計22,914の親子関係に関するデータが統合されました。その結果、子どものサインに気づき、その意味を捉え、適切に応じる「養育者の敏感性」と、子どもの安定した愛着との間に正の関連が確認されています。母親と父親のいずれについても関連が示されました。
ただし、この研究結果は、親が一度応えられなかったことが子どもの愛着を損なうことや、一つの行動から個々の親子関係を判定できることを意味するものではありません。
また、こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」でも、乳幼児が身近な大人とのアタッチメントを通して安心感を得ることや、その安心を土台として、遊びやさまざまな体験へ向かっていくことの大切さが整理されています。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、
「一度でも十分に関われなかったら、子どもに問題が起きる」
という話ではないことです。
仕事が忙しくて遊べない日があった。
子どもの「見て」にすぐ応えられなかった。
余裕がなく、強く叱ってしまったことがある。
子育てをしていれば、そのような日はあります。
一つの出来事を取り上げて、
「あのとき十分に愛情を伝えられなかったから、この子はもう大丈夫ではない」
と考える必要はありません。
大切なのは、毎日の関わりの中で、子どもからのサインに気づいたときに、できる範囲で応えていくことです。
「愛情不足だった過去」を探し続けるよりも、今の子どもを見て、これからどのように関わるかを考える方が大切です。
【参考情報】Madigan et al. “Maternal and Paternal Sensitivity: Key Determinants of Child Attachment Security Examined Through Meta-Analysis”(Psychological Bulletin, 2024)
【参考情報】こども家庭庁「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」
愛情不足が心配なときの子どもへの接し方|家庭でできる5つの工夫
では、「最近、少し甘えが強いな」「もっと私を見てほしそうだな」と感じたとき、家庭ではどのように関わればよいのでしょうか。
特別なことをたくさんする必要はありません。
大切なのは、子どもが求めるものをすべて与えることではなく、
「あなたのことを見ているよ」
と伝わる関わりを、日常の中で積み重ねることです。
1.「見て」に短くても応える
子どもは、本当によく「見て」と言います。
しかし、料理をしているとき、仕事をしているとき、下の子のお世話をしているときなど、毎回すぐに手を止められるわけではありません。
そのようなときまで、
「今すぐ見なければ、この子は愛情不足になる」
と考える必要はありません。
余裕があれば、一度手を止めて、
「見ているよ」
「できたね」
「そんなものを作ったんだね」
と反応してみましょう。
今すぐ見ることが難しければ、
「今これを終わらせたら見るね」
「ちょっと待ってね。あとで見せて」
と伝えることもできます。
そして、できればあとで実際に見る。
それだけでも、子どもにとっては「無視された」のではなく、「今はできないけれど、自分のことを気にかけてもらえている」と感じるきっかけになります。
ハーバード大学のCenter on the Developing Childでは、幼い子どもからの表情、声、身振りなどの働きかけに大人が反応する双方向のやり取りを「serve and return」と呼び、こうした応答的な関係が発達を支えると説明しています。
大げさな反応をする必要はありません。
子どもの働きかけに気づき、目を向け、言葉を返す。
そうした日常の小さなやり取りも、親子の関係を作っています。
2.短くても、その子だけに関心を向ける時間を作る
仕事や家事が忙しいと、
「もっと子どもと一緒にいる時間を増やさなければ」
と思うかもしれません。
しかし、現実には一緒に過ごす時間を大幅に増やすことが難しい家庭もあります。
その場合は、時間の長さだけではなく、短くても、その子だけに関心を向ける時間があるかを考えてみてください。
たとえば、
寝る前に今日あったことを少し話す。
お風呂に入りながら話を聞く。
帰宅したら数分だけ子どもの話に耳を傾ける。
絵本を1冊読む。
子どもが作ったものを一緒に見る。
長時間でなくても構いません。
スマートフォンを見ながら返事をするのではなく、その時間だけは子どもの方を見る。
「自分の話を聞いてもらえた」
「自分のことを気にしてくれている」
と感じられる時間を、日常の中に少しずつ作ってみてください。
3.愛情は子どもに分かる形で伝える
親が子どもを大切に思っていても、その気持ちがいつも子どもに伝わっているとは限りません。
ときには、言葉や行動にして伝えることも大切です。
幼い子なら、
「大好きだよ」
「一緒にいられてうれしいよ」
と伝えてもよいでしょう。
少し大きくなれば、
「今日、最後まで頑張っていたね」
「話してくれてありがとう」
「困ったことがあったら言ってね」
「ちゃんと見ているよ」
という伝え方もできます。
スキンシップを喜ぶ子であれば、抱っこをしたり、手をつないだりするのも一つの方法です。
ただし、年齢が上がって嫌がるようになった子に、無理に抱きしめる必要はありません。
大切なのは、決まった方法で愛情表現をすることではなく、その子が受け取りやすい形で「あなたを大切に思っている」と伝えることです。
4.甘えは受け止めても、要求をすべて通す必要はない
愛情について考えるときに、もう一つ見落としやすいことがあります。
子どもが、
「もっと遊びたい」
「ずっと抱っこして」
「今日はお母さんと一緒にいたい」
と言ったとき、その要求を断ると、
「愛情不足になってしまうのでは」
と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、子どもの気持ちを受け止めることと、要求をすべて通すことは別です。
たとえば、
「もっと遊びたいんだね」
と気持ちは受け止めたうえで、
「でも、今日はもう寝る時間だから、続きは明日にしよう」
と伝えて構いません。
下の子を抱っこしているときに、
「私も抱っこして」
と言われたら、
「あなたも抱っこしてほしいんだね。赤ちゃんを寝かせたら次はあなたね」
と伝えることもできます。
愛情とは、子どもの希望を何でもかなえることではありません。
「あなたがそう感じていることは分かっているよ」と気持ちを受け止めながら、生活に必要なルールや枠組みは大人が作る。
この両方があってよいのです。
5.親一人ですべてを満たそうとしない
子どもが何度も甘えてきたり、「見て」と言ったりすると、
「もっと私が頑張らなければ」
と思ってしまうことがあります。
特に、仕事が忙しい方や、複数のお子さまを育てている方ほど、そのように感じることがあるでしょう。
しかし、子どもの育ちは、親一人だけで支えるものではありません。
祖父母、園や学校の先生、親族、地域の大人など、子どもが安心して関われる大人が周囲にいることも大切です。
こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」でも、子どもの育ちや子育てを家庭だけに求めるのではなく、社会全体で支えることが重視されています。
親が、
「自分一人で、この子が求める愛情をすべて満たさなければ」
と背負う必要はありません。
子どもを気にかけ、大切にしてくれる人とのつながりを増やしていくことも、子どもが安心して育つ環境を整えることにつながります。
子どもの変化が続くときは、家庭だけで抱え込まない
「見て見て」が多い。
甘えが増えた。
わがままが強くなった。
こうした一つの行動だけで、すぐに専門機関への相談が必要になるわけではありません。
一方で、
・以前と比べて大きな行動の変化が続いている
・眠れない、朝起きられないなど睡眠の変化が続いている
・食欲が大きく変化している
・園や学校へ強く行きたがらない
・元気がなく、これまで好きだったことを楽しめない
・強い不安や怒りが続いている
など、生活全体に変化が重なっている場合には、「愛情不足なのだろうか」と家庭だけで原因を探し続けないことも大切です。
厚生労働省の中高生を支える保護者向け情報「子どものSOSサイン」では、こころが疲れたときの変化が、睡眠、食欲、行動パターンなどに現れることがあると説明されています。
この資料は主に中高生を想定したものであり、幼児や小学生の状態を判定するための基準ではありません。ただ、一つの行動だけに注目せず、睡眠、食欲、登園・登校、遊び方、家族との会話など、生活全体に複数の変化が重なっていないかを見るという点は参考になります。
園や学校での様子が気になる場合は、まず先生に確認してみてください。生活への影響が続く場合や、子どもの不安が強い場合には、小児科などの医療機関に相談することも選択肢です。
子育てや親子関係全般について相談したい場合には、市区町村のこども家庭センターや地域の子育て相談窓口につながる方法もあります。こども家庭センターは、子育て家庭や子どもからの相談に応じ、必要に応じて関係機関や地域の支援へつなぐ役割を担っています。
「相談するほどではないかもしれない」と思う段階でも、保護者の方が対応に困っているのであれば、一人で抱え込む必要はありません。
【参考情報】厚生労働省「子どものSOSサイン」
【参考情報】こども家庭庁「こども家庭センター」
【参考情報】こども家庭庁「相談窓口」
よくある質問
Q.「見て見て」が多いのは、愛情不足のサインですか?
「見て」と何度も言うことだけで、愛情不足と判断することはできません。
幼い子どもが身近な大人に関心を向けてもらおうと働きかけ、それに大人が応える双方向の関係は、子どもの育ちの中で大切なものとされています。
「こんなに見ているのに、まだ求めるのは愛情が足りないからだ」
と考えるより、
「今、私に見てほしいんだな」
と、そのときの気持ちとして受け止めてみてください。
Q.共働きなどで子どもと過ごす時間が短いと、愛情不足になりますか?
一緒に過ごす時間の長さだけで、愛情不足かどうかを判断することはできません。
長い時間を取ることが難しくても、帰宅したときに目を見て話す、寝る前に少し話を聞くなど、日常の中で子どもに関心を向ける時間は作れます。
「何時間一緒にいたか」だけで、自分の子育てを採点しないことが大切です。
Q.きょうだいで親を取り合うのは、愛情が足りないからですか?
必ずしもそうではありません。
きょうだいが増えたときに、上の子がこれまで以上に親の関心を求めたり、「自分も見てほしい」と表現したりすることがあります。
その姿をすぐ「愛情不足」と考えるのではなく、
「今は自分にも目を向けてほしいんだな」
と考えてみてください。
Q.園の先生や祖父母に強く甘えるのは、親からの愛情不足ですか?
それだけで、親からの愛情が不足しているとは判断できません。
先生や祖父母など、親以外にも安心して関われる大人がいること自体を問題として見る必要はありません。
ただし、急に家庭で口数が減った、園へ行きたがらなくなったなど、ほかの変化も重なっている場合には、家庭と園の両方でどのように過ごしているのかを確認してみましょう。
まとめ|「愛情が足りているか」を採点するより、今の子どもを見る
子どもは、
「見て」
「抱っこして」
「一緒にいて」
「私の話を聞いて」
と、何度も親の関心を求めることがあります。
上田先生の子育て経験にもあったように、親が十分に見ているつもりでも、子どもはまた「見て」と言ってくることがあります。
だからといって、
「まだ求めるということは、これまでの愛情が足りなかったのだ」
と考える必要はありません。
甘える。
わがままを言う。
何度も親を呼ぶ。
きょうだいで親の関心を求め合う。
こうした一つの行動だけから、「愛情不足」と決めつけることはできません。
大切なのは、
「私は十分に愛情を与えられているだろうか」と親自身を採点し続けることではなく、今、この子は何を求めているのかを見ることです。
いつから変わったのか。
どんな場面で甘えるのか。
生活や園・学校で変化はなかったか。
ほかに気になる様子はないか。
一つずつ見ていけば、「愛情不足」という大きな言葉だけでは分からなかった子どもの背景が見えてくることがあります。
子どもが「見て」と言ったときには、できる範囲で目を向ける。
今すぐできなければ、「あとで見るね」と伝える。
甘えたい気持ちは受け止めながら、必要なルールは守る。
そして、困ったときには親一人で抱え込まず、周囲の人にも頼る。
「愛情不足かどうか」を判定するのではなく、その時々の子どものサインを見ながら、必要な関わりを考えていく。
私は、その積み重ねが親子にとって大切だと考えています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
幼児教室ひまわりの無料メールマガジンでは、東大・医学部を視野に入れるご家庭に向けて、子どもの心と学びの土台や、安心できる親子関係を育てる家庭での関わり方をお届けしています。
今回のように、「甘えが増えたのは愛情不足なのか」「忙しくて十分に関われていないのでは」と不安になる場面でも、大切なのは一つの行動や一緒に過ごす時間だけで判断せず、今のお子さんが何を求め、生活にどんな変化があったのかを見ることです。
自分を責めすぎず、お子さんの気持ちを受け止めることと、必要なルールを守ることを両立する声かけや関わり方を知りたい方は、ぜひ参考になさってください。
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